4. 営業デビューがマネージャーデビュー
— それまでの有能感?
岩松:はい。
ある意味、採用担当時代は成果も出していて、
リーダーにも任命されて、鼻高々になっていたし、
査定評価も高かった。
結局、経営企画では使い物にならないと思われたんでしょうね、
1年で異動。
就職情報誌の事業部門の企画部署に異動になりました。
ところが、あの経営企画で苦しんだ経験が活きたんでしょうね。
経営企画の時に学んだこと、企画担当としての動き方が、
実は身についていて、徐々に、昔の有能感、
良い意味での自分を取り戻してうまくやることができました。
あと、自分の得意なデータ分析の仕事も
数多くあったことも大きかったですね。
色々と企画業務をこなすうち、一年経って、マネージャーに昇格。
しかし、企画部署でのマネージャーかと思ったら、
北関東(大宮)での営業マネージャー。
営業デビューがマネージャー昇格と同時、という人事発令でした。
— いきなり。どうだったんですか?
岩松:ドキドキですよ。
営業したことのないのが、いきなりマネージャーで着任する
のだから、営業メンバーはどんな気持ちなのだろうと思うと、
本当に緊張感が高かったです。
自分で売ったことないっていうのは
信頼されないんだろうなぁと思って、赴任当初は、
課長の名刺を持って飛び込みしたり、電話したりしましたよ。
そうこうするうち、徐々に営業メンバーとの関係も
築くことができるようになりました。
— その頃、部下の育成スタイルは変わっていたんですか?
岩松:押し付けスタイルは出来ないですからね、
営業わかってないから。
だからいわゆる主流のスタイル「どう思う?」の
コミュニケーションスタイルが増えたと思います。
ただ、数字には厳しかったですね。
それに、ありがたい存在だったのは、H.T部長の存在。
その上司は、私にとって今でも信頼できる上司の一人なんですけど、
その方のスタイルがそういう形だったんです。
彼の発する言葉、接し方、お客様とのやりとり、
そういうのを見て数多くのことを学ばせてもらいました。
なかなか追いつけない存在でしたけど。
— ロールモデルですか?
岩松:ロールモデルとして「あの人みたいになりたい」っていうよりも、
「あの人のこの部分は見習いたい」みたいな感じですかね。
いいとこ取りができる人がいっぱいいるみたいな環境でした。
部下である営業メンバーにも、
見習いたい部分をたくさん持っているメンバーもいましたしね。
とはいえ、見習いたいと思う人は、
どんどん変わっていくのかもしれないです。
採用担当の時には、一番長く自分の上司だった人は、
ひとつのロールモデルでもありました。
妥協は許さないとか、結果を必ず出すみたいな、率先垂範だった。
だから自分の率先垂範系の性格に
グイグイ拍車が掛かったというのもありましたね。
営業のときの部長は、メンバーをやる気にさせるのが
すごく上手くて、特に言葉の使い方がすごく上手い。
長々喋らない、一言だけいって、刺さるみたいな感じ。
ちょうど、マネージャーとして1年経った時に
掛けられた言葉は、今でも覚えています。
2つの課を兼務することになってメンバーもお客様も倍になって、
すごく忙しい気分になって動いていたときのこと。
その部長に呼ばれて、
「人は生ものだから、ほったらかすと腐るぞ」って言われました。
シンプルだからこそ、刺さりましたね。
こうやって言葉をかけるんだってことも学びましたね。
— 営業はやってみてどうだったんですか?
岩松:面白かったですよ。
営業部署のマネジメントも面白かったし、
自分でお客様を直接担当するのも面白かった。
ただ、ずっと営業をやっていたいか、
営業マネージャーをやっていたいかというと、
正直そこまでの醍醐味はわかってなかったのかもしれません。
北関東、品川、大田、渋谷と色々なエリアを担当させてもらって、
地域ごとのお客様特性の違いもあって充実はしていました。
— 取り扱う商品はどんなものだったんですか?
岩松:営業で扱っていたのは、転職情報誌です。
徐々に、新卒のリクナビとか教育研修なども扱う営業部署に
変わっていきましたので、
大きな意味で人材総合サービス系の営業ですね。
自分の中では、担当エリアも変わったし、
取り扱う商品サービスも変わったり、
メンバーも変わったりしたので、
営業を長くやった感は実はあまり無いんです。
ほかには、プル型営業の仕組み作りにも関わったりもしましたね。
— その当時にもうプル型営業を始めていたんですか?
岩松:そうですね。
営業担当が直接訪問して商談するのではなく、
お客様データを様々な観点から分析して顧客特性ごとに分類して、
FAXやコールセンターからのアウトバウンド販促で
商談を作るという手法。元来データ分析が好きだったので、
この仕組み作りに関わったことで、当時はキャリアでいうと、
営業や営業マネージャーよりも、マーケティング的な業務も
面白いのかもなって思い始めていた頃ですね。
少し、これからのキャリアの方向性を考え始めた時期でした。